学校だより LIVE

野木沢小の教育や校長雑感をLIVEでお届けします

209 人間として生きていくために

 3年生の男の子が、職員室に、あるものを見せにきてくれました。それは、「卵から孵化したばかりのカマキリの子どもたち」でした。虫かごいっぱいに生まれてきた赤ちゃんカマキリ。すごいなあ、と言ったら、その男の子は「でも、この中で大人になるのは、ちょっとだけだよ」と教えてくれました。

 調べてみると、カマキリの卵は一つの塊の中に、約300個あるそうです。しかし、その中から成虫になれるのは、1~2匹。他の生き物についても調べてみると、海の生き物のマンボウは、一度に3億個の卵を産むそうです。しかし、やはり、その中から大人になるのは、1~2匹。

 原因は、カマキリもマンボウも、卵は自然の中に産みっぱなしのため。だから、生まれた赤ちゃんは、生まれたその時から、自力で生きていかなければならない。餌も自分で探さないといけないし、敵からも自分で逃げなければならない。でも、親は守ってくれないわけです。

 しかし、私たち人間は、違います。生まれたら、お家の人が、ちゃんと世話してくれる。だから、子どもたちは、みんな無事に大きくなれる。でも、いつも、いつまでもお家の人がそばにいるわけではありません。

 そこで、子どもたちは、学校で自分の命を自分で守るためにどうしたらよいかを学びます。交通教室や防犯教室、先日の避難訓練などを通して、車の事故に遭わないためにはどうするか、不審者にはどう気をつけたらよいか、そして、火事の時は、どう逃げるかを学ぶわけです。

 それだけではありません。子どもたちは、いずれは、親から離れて、みんな一人で生きていくのです。その時に必要なのは、周りの人とどういうふうに付き合ったら良いのかということ。これは、自力で生きていくために必要な学びです。世の中には、いろいろな人がいます。そういう自分の周りの人と、どうやって関わるか、どうやって助け合ったり、支え合ったりして、人間として生きていくか、これも学校の集団生活を通して、学ぶのです。

 先週、6年生の子どもたちは、「いしかわコネクション」で、石川小に行って、そこで、沢田小と石川小の6年生と交流しました。100人以上の他の学校の人たちを前にして、緊張したと思います。でも、来年は、その人たちと同じ中学校に入学するわけです。これは、6年生だけの話ではありません。みな、いずれは、他の学校の子どもたちと出会い、関係を築いていくわけです。だからこそ、今、この野木沢小で一緒に生活している中で、お互いのことを理解し合い、どう協力していくか、もし、もめた時は、どう解決しなければならないか、そういうことを学ばなければならないのだと思います。これも、大事な「命を守る」ことであり、「生きる力」なのだと思います。

208 「大洋デパート」火災から学ぶ

 今から、48年前、1973年(昭和48年)11月29日、13時15分、熊本県熊本市にあった百貨店「大洋(たいよう)デパート」で火災が発生しました。この火災事故で、死者104名、負傷者124名におよぶ被害を出て、日本の百貨店火災としては史上最悪の惨事になりました。そして、この火災事故がきっかけになり、建物の消防用設備の設置等が進むこととなりました。

 この大洋デパートは、当時、いろいろな悪条件が重なり、大惨事となったのですが、その一つに、火災が起きた時に、どう行動しなければならないか、その判断が人によってばらばらだったことが挙げられます。今なら、火災の時は、まず何よりも避難することが当然です。しかし、当時は、逃げることよりも、荷物を取りに戻ったり、レジの会計を締めに行ったりする人がいたそうです。また、火災が発生しているにも関わらず、消防署への通報を誰も行わず、館内放送で火災発生を知らせることもなったようです。さらに、本来、避難経路である階段が、倉庫のように荷物置き場になっていたり、非常時の脱出口になる窓が、展示物で塞がれていたりしたことで、多くの人が逃げることができませんでした。また、建物全体が改修工事中で、スプリンクラーも作動せず、初期消火用のホースからも十分な水も出なかったそうです。このような結果、104名も命が奪われる事故となりました。そして、このデパートでは、従業員の火災による避難訓練もきちんと行っていなかったということです。

 先日、本校でも避難訓練を行いました。地震から火災が発生したという想定で、避難しました。全体会で、消防署の方からお話がありました。その中で、大事なのは「まず、放送を聞くこと」という話がありました。現在は、建物火災が発生した場合、どんな場所でも、館内放送で「どこから出火したのか」「どこに避難するのか」について、放送が流れるそうです。それを、しっかりと聞くことで、安全に避難することができるということです。

 この「放送を聞く」ということは、言い換えると、「人の話を聞く」ということになります。避難訓練の時だけ、放送をきちんと聞くことはできません。そのためには、普段から、人の話を黙って聞くことができるようになっていなければなりません。授業中、先生や友達の話を、最後まで、黙って聞く。これは、全学年で取り組まなければならないと思いました。

 最後に、消防署の方から、保護者のみなさんへ、伝えてほしいことがありました。それは、「住宅用火災警報器」の設置についてです。現在は、全ての住宅で、人が住んでいる場合は、この「住宅用火災警報器」を設置しなければならないことになっています。また、設置されている場合は、電池が切れていないか、きちんと作動するか、確認してほしいとのことでした。尊い命を守るため、是非、御確認下さい。

207 運動会を終えて

 この原稿を書いている校庭の方から、子どもたちがプール清掃をしている声が聞こえてきます。運動会は終わりましたが、学校はもう次の活動へ移っているということです。

 さて、今年の運動会は、何より天気に恵まれました。昨年は、予定していた日を延期して、なお、朝から霧雨の中、保護者の皆様に校庭整地の御協力いただいて、何とかやれた運動会でした。ですので、今年は、ずっと天気に恵まれ、練習も計画通りでき、前日準備も万国旗まで張ることができました。当日も、強い日差しもなく、かといって寒くもなく、風もなく、もう運動するには最高のコンディションの中、実施することができました。たくさんの皆様に応援いただき、子どもたちは、すごく張り切って頑張りました。

 徒競走では、途中転倒してしまっても、すぐに起き上がり、駆け出す姿がありました。スタート早々、シューズの片方が脱げてしまっても、ひるむことなく、最後まで走りきる姿がありました。リレーのアンカーとして、ラスト一周、ずり下がってきたアンカーたすきが足に絡まり、転倒するも、最後までしっかりと走る姿がありました。他のチームとどんなに開いていようと、あきらめずに、必死にその差を縮めようと走る姿がありました。まだ、足の怪我が治りかけで、うまく走れなくても、みんなと同じように参加して、ゴールを目指す姿がありました。チャンスレースで、道具のひもが絡んでいても、最後までちゃんと競技する姿がありました。頑張る仲間に対して、テントの前に並んで、大声で声援を送る姿がありました。係の仕事に一生懸命取り組む姿がありました。野木沢の子どもたちの「素直さ」「健気さ」が至る所で感じられました。

 そして、閉会の言葉で、6年吉田琴葉さんが、この運動会を締めくくるあいさつを述べました。コロナ禍でも、予定どおり運動会がやれた喜び。勝ち負けだけでなく、全力で取り組むことの大切さ。そして、この運動会を支えてくれた方々への感謝。そういう思いがたくさん詰まった、素敵な運動会だったと、私も思いました。

 運動会は終わりましたが、教育活動はこれからも続きます。その中で、目標に向かって健気に頑張る子どもたちの姿を、これからも紹介していきたいと思います。どうぞ、これからも、御理解、御協力をよろしくお願い致します。最後に、運動会で頑張っている子どもたちの姿は、野木沢小ホームページに掲載してます。どうぞ、御覧ください。

206 限界突破 心を燃やして 花咲く勝利を(続き)

 だれにでも得意、不得意があります。走るのがあまり得意でない子どもにとっては、運動会の徒競走は、はっきり順番がつくので、あまり楽しみではないのかもしれません。でも、大事なのは、一生懸命に取り組むことです。たとえ、ビリになったとしても、最後まで本気・全力で、走りきること。苦手なことから逃げずにチャレンジする気持ちが大事。そして、そうやって頑張れている自分自身を、自分で多いに褒めてほしいと思います。当然、お家の方からも、頑張って取り組んでいる姿を、褒めてほしいと思います。

 運動会当日は、全員で、限界突破を目指し、周りの目を気にせず、自分の弱い心に負けず、やり遂げた満足感という喜びの花を見れるように、頑張ってほしいと思います。みんな、頑張れ!

  最後に、詩を二つ紹介します。一つは、昨年も紹介しました、阪田寛夫さんの「びりのきもち」という詩。もう一つは、谷川俊太郎さんの「かけっこ」という詩です。

  びりのきもち    坂田寛夫(さかた・ひろお)

 びりのきもちが わかるかな / みんなのせなかや 足のうら
 じぶんの鼻が みえだすと / びりのつらさが ビリビリビリ

 だからきらいだ うんどうかい / まけるのいやだよ くやしいよ
 おもたい足を 追いぬいて / びりのつらさが ビリビリビリ

  かけっこ   谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)

 いっとうのあじが バナナなら / びりのあじは にんじんか
 ところでぼくは にんじんだいすき / なまでぼりぼり かじっちゃう

 いっとうのきもちが はれならば / びりのきもちは くもりぞら
 ところでぼくは くもりがだいすき / まぶしいとみえないものが よくみえる

 谷川さんの詩を読むと、びりでも平気、びりでも楽しんじゃえ、という、とても前向きな気持ちを感じます。そんな考え方もいいなあと思います。

205 限界突破 心を燃やして 花咲く勝利を

 これは、今年の運動会のスローガンです。考えたのは、6年生の二瓶大雅さんです。大雅さんに、このスローガンに込めた思いを聞いてみました。

 ぼくにとっては、最後の運動会になるので、自分の持つ力を限界をこえるまで出し切り、心に残る最高の運動会にしたいと思い、このスローガンを考えました。
 そして、応援団長として、みんなに花咲く勝利を届けます。

 とても強い思いがこのスローガンに込められていました。きっと同じ応援団長の草野大輝さんも、同じ思いでいることと思います。紅も白も、この熱い思いを持った応援団長の下、精一杯戦ってほしいです。

 私は、このスローガンを見て、ある一つのことを思いました。それは、「ルーの法則」です。
 「ルーの法則」とは、トレーニングの世界の法則で、簡単に言うと、「人の体は、適度に使っていることで発達し、使わないでいると衰える」というものです。当たり前のような気もしますね。しかし、この適度な運動で大事なのは、自分の持っている力をちょっとだけ超えるということです。自分の持っている力を100としましょう。トレーニングでは、この100を常に意識し、それを、ちょっとだけ越えるようにします。そうして、トレーニングし続ければ、もともとの100の力が、102の力になるということです。一方、もともと100の力があるのに、トレーニングで全力を出さずに、少し手を抜いたトレーニングを続ければ、100の力があった自分の体がちょっと衰え、98の力の体になってしまうのです。
 だから、大事なのは、常に全力で、自分の限界をちょっとだけ突破したトレーニングを続けることです。そういう姿勢が、大事なのです。

 結果は、あとからついてくるもの。それよりも大切なことは、常に、限界突破の本気全力で、持っている力を出し切ること。中途半端にやらないということです。終わってから、「ああ、ホントはもっとやれたのになあ」なんて言うのは、愚の骨頂で、自分を全く鍛えてはくれません。例え何着になろうとも、ゴールするまで、あきらめず、本気・全力を出して、ベストを尽くす。そういう姿勢こそが、自分を高めてくれるのです。(続く)