学校だより LIVE

野木沢小の教育や校長雑感をLIVEでお届けします

159 イメージする力

 国際教育到達度評価学会が行っている、国際数学・理科教育動向調査の結果が新聞に載りました。世界の小4と中2を対象に実施した調査で、4年ごとに行われているようです。

 結果は、小中全てにおいて上位5位以内に入り、小4理科で平均得点が下がったものの、他は伸びているということでした。かつて、算数嫌い、理科離れが問題になったことがありましたが、かなり解消されているということだと思いました。ただ、今回の結果で気になったのは、算数・数学と理科の平均点の差です。算数が593点、数学が594点なのに比べ、理科は小学校で562点、中学校で570点と、教科の間でかなり差があることです。問題が載っていないので、一概には言えないのですが、算数・数学的な問題の正答率に比べ、理科的問題の正答率が低いのは何かあるのかと思いました。

 算数・数学と理科は、よく理数系と呼ばれることがあります。理数系と呼ばれると、どこか数字を扱って、理路整然とした考え方をするようなイメージにとらわれますが、決してそれだけではないと思っています。どちらかというと、算数・数学も理科も、すごく想像的で、文学的で、言葉を大切に扱っているように思います。例えば、算数の文章題の問題が苦手な子どもは、その問題の情景をイメージできていないことが原因だったりするからです。文章の内容を理解できるかどうか、大事なのは想像する力です。言葉の表現を具体的にイメージできるかどうかです。同じように、理科の実験でも、どういう条件をそろえて、何を変えて実験するかなどは、その実験自体をイメージできないと理解が深まりません。実験観察の結果を、どういう言葉で表現するかも大事です。物理学なども、自然界の現象から法則を見つけるわけですから、極めて想像的だと思うのです。単に数字を扱っているだけではないわけです。それより、いろいろな事象を言葉を駆使して説明する文章力も必要なわけです。この文章力や想像する力、イメージする力は、読書によって培われます。優れた科学者たちは、みな読書家であったりするのもうなずけます。

 先週、コミュタン福島で、理科自由研究発表会が行われ、県内の子どもたちの発表を見る機会がありました。見学して驚いたのは、小学生でも、いろいろなことに興味を持ち、楽しく研究に取り組んでいる子どもがいることでした。6年生で、蚕の遺伝子研究やバラの花の交配などに取り組んでいる子がいました。短時間では、どんな研究だったのか、大人でも理解が難しいような内容でしたが、本人たちは、とてもわくわくしながら、楽しく研究していることだけは、見ていて伝わりました。この楽しく学ぶという姿勢は、とても大事だと思いました。理科の実験・観察も、とても楽しいものです。その楽しさを味わいながら学ぶことが、結果的に理科に対する興味関心を高め、学習内容の定着を確かなものにしていくのだと思いました。

158 新型コロナウイルス感染症について

 感染症専門医で国際感染症センターに勤務する忽那賢志(くつな さとし)先生が、「新型コロナの症状、経過、重症化のリスクと受診の目安」について、ホームページで記事を掲載されています。この記事をもとに、改めて、気をつけることを確認したいと思います。

新型コロナウイルス感染症の典型的な症状
 新型コロナの潜伏期間(感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間)には1~14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4~5日で発症します。新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。風邪は、微熱を含む発熱、鼻水、鼻詰まり、ノドの痛み、咳などの症状がみられることが多く、またインフルエンザも風邪と似ていますが、風邪に比べると高熱が出ることが多く、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うことがあります。風邪はインフルエンザに比べるとゆっくりと発症し、微熱、鼻水、ノドの痛み、咳などが数日続き、インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、ノドの痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが3~5日続きます。しかし、風邪やインフルエンザが新型コロナのように1週間以上続くことは比較的稀です(ただし咳や痰の症状だけが2週間程度残ることはよくあります)。 また、新型コロナでは典型的には、発熱・咳・だるさ・食欲低下・息切れ・痰・筋肉痛・嗅覚障害・味覚障害などの症状の頻度が高いとされます。特に「息切れ」「嗅覚障害・味覚障害」の症状は、風邪やインフルエンザでは稀な症状ですので、新型コロナの可能性を疑うきっかけになります。

新型コロナウイルス感染症の典型的な経過
 新型コロナに特徴的なのは、症状の続く期間の長さです。前述のように新型コロナウイルス感染症は風邪やインフルエンザによく似ていますが、症状が続く期間がそれらと比べて長いという特徴があります。特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かっています。流行早期の中国での4万人の感染者のデータによると、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約8割の方はそのまま治癒しますが、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に肺炎の症状が悪化して入院に至ります。2割のうち全体の約5%の症例で集中治療が必要になり、約2%の事例で致命的になりうるとされています。

新型コロナが重症化しやすい人は?
 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く、若者は低い傾向にあります。重症化する割合や死亡する割合は以前と比べて低下しており、6月以降に診断された人の中では、重症化する人の割合は 約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)となっています(厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症の“いま”についての10の知識」より)。これは、1月~4月の頃に比べて、軽症や無症状の人にも検査が行われるようになり感染者全体の重症度が下がったこと、そしてデキサメタゾンなどの治療薬による効果が現れていること、などが要因と考えられます。新型コロナウイルス感染症で重症化しやすいのは高齢者と持病のある方です。30代くらいまでは亡くなる人はほとんどいませんが、40代以降から徐々に致死率が高くなり、80歳以上では23%という非常に高い致死率となっています。日本国内のデータからも年齢が上がれば上がるほど致死率が高くなることが改めて数字として示されています。

病院を受診する前に
 自身が新型コロナかなと思ったら、まずはかかりつけ医か地域の医療機関に相談しましょう。

福島県では、かかりつけ医など相談する医療機関に迷う場合や、土日・夜
間などかかりつけ医が休診のときには
  福島県受診・相談センターへ(0120-567-747)24時間OK

 医療機関に受診が必要と判断されたら、マスクを着けて、なるべく公共の交通機関を使わずに病院を受診するようにしましょう。新型コロナは時期や地域によって流行状況が大きく異なります。つまり、発熱や咳のような症状が出現したとしても新型コロナである可能性は、住んでいる地域によって変わってきます。各地域における流行状況は、新規発生患者数・新規発生患者数のうち接触歴不明の患者の割合・PCR検査陽性率を参考にしましょう。新規症例報告数がほとんどなく、検査陽性率も低い地域にお住まいの方は、風邪症状が出たとしても、海外渡航歴や接触歴がなければ新型コロナの可能性は高くないでしょう。時期や地域によって、自身が新型コロナに罹る可能性も変わってきますので、お住まいの地域の流行状況をしっかりと把握しておくことが大事です。風邪やインフルエンザのような症状が出現した場合は、個々人が自身の感染リスクと重症化する可能性を考慮した上で、病院を受診するかどうか判断し、迷う場合にはかかりつけ医や前述の相談センターに電話で相談しましょう。また、病院を受診しない場合も、手洗いや咳エチケットなどの予防対策は必要ですし、周囲の人(特に高齢者や持病のある人)にはうつさないような配慮が必要です。新型コロナを広げないためには、手洗い、屋内でのマスク着用、3密回避など新型コロナに注意した生活を続けることが重要です。

157 夜空を見上げてみませんか?

 先日の早朝、南の空に、偶然、流れ星を見ました。見た目で5cmくらいの長さで、かなり明るく光って流れたので、とてもうれしかったのですが、調べてみたら、今、ちょうど「ふたご座流星群」の出現時期だったようです。

 流星が多く見られる主な流星群は、1年間に11個程ありますが、その中で、特に、毎年ほぼ安定して多くの流星が出現する3大流星群というのがあります。それが、12月28日頃から1月12日頃見られる「しぶんぎ座流星群」。7月17日頃から8月24日頃に見られる「ペルセウス座流星群」。そして、今の時期見られる「ふたご座流星群」です。

 国立天文台のホームページによると、ふたご座流星群は、毎年ほぼ一定して、多くの流星が見られるという点では、年間最大の流星群と言えるそうです。今年は特に条件がよく、15日が新月のため、月明かりの影響が少なく、いつもより多くの流星が見られそうです。流星が最も多く現れそうなのは、13日の夜から14日の明け方にかけてです。日付が14日に変わる頃、空の暗い場所で観察すれば、最大で1時間あたり55個前後の流星が見られるそうなので、期待したいです。また、12日の夜、14日の夜も、最大で1時間あたり20個を超える流星が出現するようなので、天気が良ければチャレンジしたいですね。いずれの夜も流星は、午後8時頃から現れ始め、本格的な出現は午後10時頃からで、夜半を過ぎた頃に数が最も多くなり、明け方まで流星の出現が続くようです。

 流星は、空全体に現れます。いつどこに出現するかは分かりませんので、なるべく空の広い範囲を見渡すようにするといいです。また、目が屋外の暗さに慣れるまで、最低でも15分ほどは観察を続けると良いでしょう。レジャーシートを敷いて地面に寝転ぶなどすると、楽に観察できますが、大変寒い季節ですので、寒さ対策をしっかり行ってください。それから、事故に遭わないように、子どもだけでは見ないように、十分注意して観察をしてください。

156 理科自由研究発表会 at コミュタン福島 講評

12/5(土)コミュタン福島で行われた、理科自由研究発表会 at コミュタン福島 研究発表会 午後の部において、講評を述べる機会がありました。前半は、発表した子どもたちの発表内容について、一人ずつ感想を述べ、後半、全体的に以下のような話をしました。

「さて、突然ですが、問題です。我が福島県の偉大な医学博士と言えば、誰でしょうか?
 きっとみなさん、野口英世博士の名前をあげるでしょう。世界的にも有名です。野口博士は、一度、帰国したことがあります。その時、母校の猪苗代の翁島小学校で講演をしました。その講演の中で、野口博士が板書した事が3つあります。それは、『目的・正直・忍耐』です。この言葉は、今回、発表されたみなさんの研究に取り組む姿勢と共通するかもしれません。目的を持って、研究結果に正直に向き合い、そして、最後まで忍耐強く取り組む。
 それでは、もう一問。同じく福島県の偉大な病理学者で、癌研究の先駆者と言ったら、誰でしょうか?
 実は、私は、この春、石川地区内の小学校に赴任するまで、恥ずかしながら、この人物のことを知りませんでした。
 それは、吉田富三博士です。
 吉田富三博士は、石川地区の浅川町出身です。吉田富三博士が発見した「吉田肉腫」は、移植可能ながん細胞で、今でも、がんの研究に使われています。この「吉田肉腫」は、今年、国立科学博物館の未来技術遺産に登録されました。
 吉田富三博士は、1959年に文化勲章を受章しています。これまで福島県出身者で、文化勲章を受章している人は、5名しかいません。その一人が、吉田富三博士です。

 今回、なぜ、吉田富三博士の話をしたかというと、今日、発表されたみなさんも、私と同じようなことをしたのではないかと思ったからです。

 私が、吉田富三博士の存在を知った時、もっと詳しく知りたいと思いました。そこで、吉田博士について、ネットで調べました。それから、吉田富三記念館に出かけて、そこに展示してある物を見ました。さらに、博士について書いてある本を何冊か読んだりもしました。

 みなさんも、それぞれの研究テーマについて、きっかけは、何でかな?どうしてだろう?こうしたらどうなるかな?という疑問だったと思います。そして、そのことについて、もっと詳しく調べてみたいと思ったと思います。ネットで調べたり、図書館で資料を見たりした人もいると思います。実際に、現場に行って、観察した人もいると思います。自分で、一つ一つ実験をして確かめた人もいるでしょう。

 みなさん、そうやって、最初の疑問を解決するために、いろいろアプローチして、できる限りのことを行い、それらをまとめた結果が、本日の研究発表だったのだと思います。その、できる限りのことを、最後まであきらめずに、根気強く、こつこつと取り組む姿勢こそが、評価されるのです。

 「むのたけじ」というジャーナリストがいました。ジャーナリストは、新聞などの報道機関に記事を提供する人です。このむのたけじさんが、「詞集たいまつ」の中で、次のような言葉を残しています。
「学ぶことをやめれば、人間であることをやめる。生きることは学ぶこと、学ぶことは育つことである。」
 私たち人間は、生まれながらに、学ぶ生き物なのです。知らないことを知りたい、もっと深く学びたい、そういう欲求をもった生き物なのです。その欲求こそが、生きるエネルギーなのではないでしょうか。
 簡単に知れること、すぐ分かること、それにはあまり価値がないのかもしれません。それより、よく考えたり、いろいろ調べたり、根気強く取り組んだりして、やっと分かったこと、知ったことにこそ、価値があるのかもしれません。

 そういう意味で、今日、みなさんが発表した内容の価値は、きっと取り組んだ皆さん自身が、一番感じているのかもしれませんね。

 みなさん、これからも、科学事象に疑問を持ち続けてください。そして、その疑問を解決すべく、柔軟な発想で、自分の素直な気持ちに寄り添い、これからも、自分らしい研究に取り組んでほしいと思います。

 今日は、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。」

155 朝のリズムが鍵です!

 第2回「朝食について見直そう週間運動」アンケート結果は次のとおりでした。

 朝食摂取者(最終日)     99.0%
 朝食に野菜を食べた児童     65.7%
 朝食に汁物をとった児童    72.5%
 昼食以外に誰かと食事した回数
      2回(朝、夕)   97.1%
      1回(朝夕どちらか) 2.9%
      0回         0.0%

 ほぼ全員の児童が、朝食をとり、それも家族の誰かと取っていることが分かりました。アンケートへの御協力、ありがとうございました。

 ちょうど、この時期、学年ごとに食育の授業を行っています。1年生から4年生までは、本校養護教諭が教室に入り、担任の先生と指導しました。5年生と6年生は、本日、石川小学校の栄養教諭の先生に御指導いただきました。

 先日は、2年生が「早ね 早おき 朝ごはん」のテーマで学習しました。その中で、元気に過ごすためには、早寝・早起き・朝ご飯を中心とした生活リズムを整えることが大切だということが分かり、健康な生活を実践することができることがねらいになっていました。

 授業では、まず、アンケートにより、自分たちの生活のしかたを振り返りました。そこでは、規則正しい生活リズムがとれている児童がいる一方、寝る時刻が遅くなってしまったり、朝ご飯が食欲がなく食べられなかったりしている児童がいました。その後、紙芝居で、生活リズムについて考えました。その紙芝居に登場する女の子は、寝るのが遅く、朝自分から起きられず、朝ご飯を食べず、学校では眠くて、運動もだるくてやらない生活をしていました。

 結果、体重も増え、ますます運動嫌いになっていました。この女の子の問題点と今後どうすればよいか、子どもたちが考えました。早く寝ればいい、朝ご飯を食べる、頑張って運動する等、自分たちの生活と照らし合わせながら、改善点を考えました。結果、紙芝居の女の子は、生活リズムがよくなって、中学校ではバレーボール部に入り、それから20年後、ママになってもママさんバレーを続けているというお話で、紙芝居は終わりました。

 この話し合いの中で、とても興味深いことがありました。朝ご飯とうんちの関係について説明があった時、ある子どもから「朝ご飯食べても、うんちをしたら出ちゃうんじゃないの」という疑問でした。なるほど、食べてもうんちで出ちゃったらだめじゃないか、という素朴な疑問でした。養護教諭の先生から、朝、うんちで出るのは、12~14時間前に食べたもので、朝ご飯で食べたものは、その日のエネルギーになることを説明してもらい、みんな納得した様子でした。

 先のアンケート結果から、野木沢小の子どもたちは、朝、しっかりと朝食が取れています。だから、学校に来たら、朝から外を走り回って、元気に遊べるのだと思いました。そして、授業でしっかり頭を使って、エネルギーを消費し、お腹が空いて、給食をもりもり食べ、また、午後、頑張って過ごす。そして、家に帰ったら、宿題をやって、午後9時から10時には就寝し、朝6時頃、お腹が空いて起きてきて、朝ご飯をしっかり食べる…というよい生活リズムが取れているのだと思いました。大事なのは、朝のリズムです!そこを整えることで、他の時間も整っていきます。今後も、よい生活リズムを続けていけるよう、引き続き、よろしくお願いします。

154 教育相談、ありがとうございました

 お忙しい中、御来校いただき、教育相談に御協力いただき、ありがとうございました。普段、なかなか保護者の皆様とお話しする機会が取れないので、とても貴重な時間となりました。その中で、お子様の成長に関して、学校からの情報と御家庭からの情報を共有できたことは、とても有意義でした。また、学校・家庭のそれぞれが、今後どのように携わっていくか、確認することもできたと思います。前にも述べましたように、家庭と学校は、子どもたちの健やかな成長という、共通の目的を持った同士・仲間ですので、そのために、情報を共有し、お互いの関わり方について確認し、しっかりとタッグを組んでいきたいと思っております。今回は、限られた時間の中での話し合いでしたので、もし、もっと御相談したい事がありましたら、気軽に学校まで御連絡いただきたいと思います。

153 吉田富三子ども科学賞授賞式

 浅川町の吉田富三記念館において、今年の子ども科学賞特別賞の授賞式が行われました。例年ですと、県の児童理科作品展の最優秀賞が子ども科学賞を受賞しているのですが、今年は、県の児童理科作品展が中止になったため、地区の推薦作品にのみ、特別賞が贈られました。以下、来賓として述べたあいさつです。

「今年度、石川地区小学校教育研究会理科研究部の部長をしております、野木沢小学校校長、佐藤です。一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

 この度は、吉田富三子ども科学賞授賞式に際し、特別賞を受賞された皆さん、おめでとうございます。

 今年は、みなさん、ご存じのように、新型コロナウイルスの影響で、県の児童理科作品展は中止となり、それを受け、県内のほとんどの地区も、今年は理科作品展を行わないこととなりました。

 実は、以前にも、今年と同じような時がありました。平成23年、あの東日本大震災があった年です。あの時も、県や各地区の理科作品展が中止になりました。しかし、この石川地区は、震災のあった年も、理科作品展を開催していたのです。私は、驚きました。それは、地区の理科作品展の審査結果で推薦になった作品に、吉田富三子ども科学賞特別賞を授けていただいていたからでした。この吉田富三子ども科学賞が、どんな社会状況だろうと、子どもたちの科学を追究する姿を継続して応援してくれていたわけです。そういうことから、石川地区では、今年も、理科作品展を開催することになりました。

 審査が終わり、この吉田富三記念館をお借りして、一日だけ展示会を開催しました。180名もの方々にお出で頂き、みなさん、熱心に作品をご覧になりました。その様子を見て、今年、石川地区で理科作品展をやって良かったなあと、しみじみ思いました。

 今回、特別賞を受賞された皆さんの取り組みは、プレートになって、この記念館内に半永久的に掲示されます。みなさんが大人になった時、自分の子どもが、このプレートを見て、きっと驚くことでしょう。そして、みなさんを誇りに思うでしょう。そして、みなさんを手本にして、理科研究に興味をもつのではないかと想像します。そういう意味でも、これからも、吉田富三記念館が末永く、この石川地区の科学に興味を持つ子どもたちが育つ場所として、あり続けてほしいと願っています。そして、今後も、石川地区理科作品展を支えて頂ければ有り難いです。

 本日は、誠におめでとうございました。」

福島民報に掲載された写真

152 思うようにいかないことにも意味がある

 27日の全校集会で、次のような話をしました。

「おはようございます。今日のお話は、『人生は、思うようにいかないことが多い。』という話です。

 例えば、学校生活においても、そうだと思うんですが、運動するのが苦手な人にとっては、運動会やマラソン大会があることがそうかもしれませんし、国語や算数が苦手な人にとっては、学力テストがそうかもしれませんし、野菜が苦手な人にとっては、給食があること自体、そうかもしれません。また、これまで友達とうまくいかないことがあった人もいると思います。それから、ほしいものがあっても、なかなか買ってもらえなかったりもすると思います。

 人生は、そういう思うようにいかないことの連続なのだと思います。しかし、『それには意味がある。』んです。だから、思うようにいかないからといって、やらなくていいわけではない。逆に、そういうことも、我慢して、やらなければならないんです。なぜなら、思うようにいかないことが、自分にとって、どういう意味があるかは、やってみなければわからないからです。だから、『何にでもチャレンジ』なんです。とにかく、頑張ってやってみる。やる前から、逃げない。やる前から、文句を言わない。まずは、やってみる。やってみて、その後で、自分にとって、どんな意味があったのか、自分で確かめてほしいのです。

 あきらめたら、何も変わりません。縄跳びの二重跳びだって、練習を頑張って、でも、なかなかできなくて、それでも頑張って練習して、そうして、ある時、できるようになります。できないからやーめた、と言っていたら、一生できないまま。苦手な食べ物だってそう。友達関係だって同じ。言いたいことがあっても、言わなかったら、何も変わらない。

 しかし、がんばってチャレンジしたからといって、思うようにいくかというとそうではない。やはり、思うようにいかないことが続く。それでも、あきらめずに、やり続けること。そういうことを繰り返すことが、生きることです。そうやって、生きていると、ある時、思うようにいくことがあります。だから、うれしいんです。そういう時、生きるって、面白いなあと、思うんです。頑張ってくださいね。」

151 矢口高雄さんを偲んで

 みなさんは、「釣りキチ三平」という漫画をご存じでしょうか。三平少年が、日本や世界の様々な魚釣りに挑戦する釣り漫画です。以前紹介しましたが、釣り好きで漫画好きだった少年時代の私にとっては、バイブル的な存在でした。作品の中には「伝説の魚」「幻の怪魚」なども登場しますが、そのほとんどが実在する魚がモデルになっていたようです。例えば、「O池の滝太郎」というのがありました。これは、山形県鶴岡市の山奥にある大鳥池に生息しているといわれる巨大魚「タキタロウ」がモデルでした。実は、私の父親の故郷が鶴岡市でして、小学生の頃から大鳥池があることも、そこにタキタロウ伝説があることも知っていました。ですから、いつか行ってみたいと思っていたところ、大学時代、たまたま車で鶴岡に行く機会があり、念願の大鳥池に行ったことがあります。大鳥池は、車では行けない山奥にありまして、片道2時間以上歩いていったことを覚えています。苦労してたどり着いた大鳥池は、思ったより大きくて、いかにも巨大魚が潜んでいそうな雰囲気のところで、ここで三平少年が釣りをしたのだと想像しました。漫画では他にも、北海道釧路湿原の幻のイトウや、カナダのキングサーモンなど様々な魚釣りを取り上げていて、劇画タッチの漫画でしたので、描写がリアルで、まさに自分も体験したつもりになって、夢中で読みあさっていました。
 この漫画の作者、矢口高雄さんが先日、81歳で亡くなりました。矢口さんの故郷は、秋田県の横手市の山村で、冬はかなりの豪雪地帯でした。子どもの頃から漫画が好きで、手塚治虫さんの漫画をよく真似して描いていました。高校卒業後、地元の銀行に就職しますが、その頃から漫画を描き始め、30歳で漫画家としてデビュー。34歳の時に「釣りキチ三平」の連載がスタート。実はそのちょっと前に、「幻の怪蛇バチヘビ」という作品を描いています。ご存じの方はいるでしょうか。その昔、ツチノコという未確認生物がブームになりましたが、そのきっかけを作った漫画です。他にも、秋田の狩猟集団「マタギ」を題材にした作品や故郷秋田を題材にした「おらが村」などがあります。
 この「おらが村」の中で、秋田の田舎生活や子ども時代の思い出を描いているのですが、私が印象に残っているシーンがあります。一つは、豪雪地帯の秋田の山奥、冬、雪が降る様子を「上みれば虫ッコ… 中みれば綿ッコ… 下みれば雪ッコ…」と表現しているシーン。もう一つは、都会生活をしている人が田舎に帰ってきて、昔と変わらないその暮らしぶりに「いつまでも変わらないでほしい」と言うのに対して、その村で生活する人が言い返すシーンです。「このワラぶき屋根、いかにも田舎らしくて良いな…とか、この村はいつまでも変わらないで欲しいというのは勝手だが、しかし、そういう考え方は便利な都会で生活する者の、心のおごりではないか。ここで生活する人間の身になってみれば、アルミサッシの窓やステンレスの流し台、タイル張りの浴槽が良いに決まっているし、どんどん村は変わっていい。故郷はいつまでも同じでなくて、どんどん変わって欲しいと思うことはいけないのか。」子どもながら、深く考えさせられたことを思い出します。

150 郷土かるた

 群馬県に「上毛かるた」というものがあります。群馬県の郷土かるたで、作られたのは1947年。このかるたを使って、毎年2月に上毛かるた大会が全県的に行われているそうです。ですから、群馬県の小学生は、冬休みに練習するのが恒例で、その結果、ほぼ全員が上毛かるたの読み札を覚えているそうです。テレビでも、群馬県出身者と分かると、「い」「伊香保温泉 日本の名湯」等と上毛かるたを話題にしているので、後存知の方もいるのではないでしょうか。

 私は昔からこの「上毛かるた」文化をうらやましいと思っていました。かるたを通して、郷土を知り、郷土を愛する心が育つわけですから。そんなことを考えていたら、先日、学校の図書館で「いしかわまち 郷土かるた」なるものを見つけました。なんと我が石川町にも、郷土かるたがあったのですね。調べてみると、2008年に作られたようです。早速、どんな札があるのか、箱を開けてみました。その中で、野木沢に由来しているものは、次の札でした。

「あ」「悪戸古墳 時を越えて 石室の中に」
「そ」「その水は 式部ゆかりの 小和清水」
「の」「野木沢の 式部をしのぶ 光国寺」
「は」「禿山公園 真紅にそめる 山つつじ」
「へ」「ペグマタイト 結晶の大きさ 日本一」
「わ」「和久 沢井 曲木にもあるよ 板碑群」

 この中の禿山は、残念ながら、今は公園でなくなっています。時代と共に、変わってしまったものはしかたありません。それでも、この「いしかわまち 郷土かるた」には、石川町のよき郷土が札になっているわけですから、このかるたを通して、石川町のよさを知り、石川町への郷土愛が育まれることは期待できそうです。
 しかし、かるたという遊びは、絵札を囲むように見合って、読み札が読まれたら、お互いに手を伸ばして絵札を取り合う、接触や密になることは避けられない遊びです。今のコロナ禍では、ちょっと遊びづらいかもしれないなあ、とも思いました。