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1. 156 理科自由研究発表会 at コミュタン福島 講評

投稿日時: 2020/12/07 野木沢小-サイト管理者

12/5(土)コミュタン福島で行われた、理科自由研究発表会 at コミュタン福島 研究発表会 午後の部において、講評を述べる機会がありました。前半は、発表した子どもたちの発表内容について、一人ずつ感想を述べ、後半、全体的に以下のような話をしました。

「さて、突然ですが、問題です。我が福島県の偉大な医学博士と言えば、誰でしょうか?
 きっとみなさん、野口英世博士の名前をあげるでしょう。世界的にも有名です。野口博士は、一度、帰国したことがあります。その時、母校の猪苗代の翁島小学校で講演をしました。その講演の中で、野口博士が板書した事が3つあります。それは、『目的・正直・忍耐』です。この言葉は、今回、発表されたみなさんの研究に取り組む姿勢と共通するかもしれません。目的を持って、研究結果に正直に向き合い、そして、最後まで忍耐強く取り組む。
 それでは、もう一問。同じく福島県の偉大な病理学者で、癌研究の先駆者と言ったら、誰でしょうか?
 実は、私は、この春、石川地区内の小学校に赴任するまで、恥ずかしながら、この人物のことを知りませんでした。
 それは、吉田富三博士です。
 吉田富三博士は、石川地区の浅川町出身です。吉田富三博士が発見した「吉田肉腫」は、移植可能ながん細胞で、今でも、がんの研究に使われています。この「吉田肉腫」は、今年、国立科学博物館の未来技術遺産に登録されました。
 吉田富三博士は、1959年に文化勲章を受章しています。これまで福島県出身者で、文化勲章を受章している人は、5名しかいません。その一人が、吉田富三博士です。

 今回、なぜ、吉田富三博士の話をしたかというと、今日、発表されたみなさんも、私と同じようなことをしたのではないかと思ったからです。

 私が、吉田富三博士の存在を知った時、もっと詳しく知りたいと思いました。そこで、吉田博士について、ネットで調べました。それから、吉田富三記念館に出かけて、そこに展示してある物を見ました。さらに、博士について書いてある本を何冊か読んだりもしました。

 みなさんも、それぞれの研究テーマについて、きっかけは、何でかな?どうしてだろう?こうしたらどうなるかな?という疑問だったと思います。そして、そのことについて、もっと詳しく調べてみたいと思ったと思います。ネットで調べたり、図書館で資料を見たりした人もいると思います。実際に、現場に行って、観察した人もいると思います。自分で、一つ一つ実験をして確かめた人もいるでしょう。

 みなさん、そうやって、最初の疑問を解決するために、いろいろアプローチして、できる限りのことを行い、それらをまとめた結果が、本日の研究発表だったのだと思います。その、できる限りのことを、最後まであきらめずに、根気強く、こつこつと取り組む姿勢こそが、評価されるのです。

 「むのたけじ」というジャーナリストがいました。ジャーナリストは、新聞などの報道機関に記事を提供する人です。このむのたけじさんが、「詞集たいまつ」の中で、次のような言葉を残しています。
「学ぶことをやめれば、人間であることをやめる。生きることは学ぶこと、学ぶことは育つことである。」
 私たち人間は、生まれながらに、学ぶ生き物なのです。知らないことを知りたい、もっと深く学びたい、そういう欲求をもった生き物なのです。その欲求こそが、生きるエネルギーなのではないでしょうか。
 簡単に知れること、すぐ分かること、それにはあまり価値がないのかもしれません。それより、よく考えたり、いろいろ調べたり、根気強く取り組んだりして、やっと分かったこと、知ったことにこそ、価値があるのかもしれません。

 そういう意味で、今日、みなさんが発表した内容の価値は、きっと取り組んだ皆さん自身が、一番感じているのかもしれませんね。

 みなさん、これからも、科学事象に疑問を持ち続けてください。そして、その疑問を解決すべく、柔軟な発想で、自分の素直な気持ちに寄り添い、これからも、自分らしい研究に取り組んでほしいと思います。

 今日は、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。」