野木沢小の教育や校長雑感をLIVEでお届けします
294 オンラインゲームについて考える⑤
今回で、このシリーズは終了になります。
お家の方にご協力いただき、オンラインゲームの実態調査を行いました。その結果、半分を超える子どもたちが、全学年において、オンラインゲームをしているということが分かりました。やっている時間も、平日は1時間から2時間程度、休日は2時間以上ということがわかりました。また、学力調査との相関関係をみると、オンラインゲームをたくさんやっている子どもほど、正答率が低いことが分かりました。そして、同じようにたくさんやっている子どもは、あまり本を読んでいない傾向があることも分かりました。
ここで、最後に考えたいことは、これです。
平日・休日の家庭での過ごし方について |
福島県教育委員会が「家庭学習スタンダード」というものを示しています。これは、家庭学習を充実させるためのものですが、その中で、特に大事にしているのが、
「自己マネジメント力」です。
マネジメントとは、目標に向かって管理するという意味ですから、この自己マネジメントとは、家庭での過ごし方を、目標に向かって、自分で管理するということになります。前のLIVEで触れましたが、家で過ごす5時間を、何のために、どのように過ごすかということです。子どもたちの中には、習い事なども含め、毎日、目標に向かってやるべき事をきちんと決めて、努力している子が多くいると思います。その一方で、半数近くの子どもたちは、ゲームに多くの時間を費やして過ごしているわけです。だらだらと時間も決めずに遊ぶことは、マネジメントできていない状態です。そうではなく、限られた時間を、もう少し、自分でマネジメントして、自分のために有意義な過ごし方を考えていきましょう、というわけです。個人的には、平日の2時間ゲームは、やり過ぎだと思っていますし、休日も3~4時間はやり過ぎです。ゲームは楽しいので、気がつくと、あっという間に時間が経ってしまいます。ましてや、オンラインで他の人と一緒に遊んでいたらなおさらです。しかし、そこを、時間を決めて遊べるようになってほしいのです。オンラインで遊ぶなら、その仲間の中で、時間を決めるか、遊ぶ前に、自分はどれくらいで終わるのか、それを決めて遊んでほしいと思います。(続く)
293 オンラインゲームについて考える④(続き)
実は、ここには、読書と学力の関係も大きく影響していると思われます。次の表を見て下さい。
貸出冊数 | 国語の平均正答率 | 算数の平均正答率 |
71~25冊(平均36冊) | 71.3% | 64.8% |
23~12冊(平均16冊) | 68.6% | 59.0% |
11~2冊(平均6.5冊) | 61.3% | 52.1% |
これは、同じ子どもたちの本の貸出冊数と正答率の関係を表した物です。国語も算数も、貸出冊数が多い子どもの方が、正答率は高い傾向が見られます。今回は貸出冊数で比較しています。高学年の子どもの中には、ページ数が多い本を読んでいるので、貸出冊数が多くない子どもでもよく読書をしていることはあります。ですから、全体としてこういう傾向があると思って見て下さい。
読書と学力の関係については、いろいろと理由がありますが、その中でも、特に大きな理由として、読書をする子どもは、読書することで、思考に必要な「学習言語」を身に付けているからだと言われています。先生の話を聞いて理解したり、文章を読んで、その意味を理解したりする言語力は、人と会話する時の生活言語の「日常会話力」ではなく、「学習言語力」です。
この「学習言語」は、本を読むことで身に付けることができます。逆に言うと、本を読まないと、身に付けることができないと言われています。読書することで、語彙力や読解力が発達するのは当然ですが、それだけでなく、思考力や想像力を高めます。そして、多様な考え方に触れることで、他者理解もできるようになり、他の人との共感性も高まります。さらには、読むという行為に必要な根気強さも培います。そして、「学習言語」を身に付けることで、授業を受けていて、先生や友達の話していることを理解し、自分の考えを論理的に組み立て、課題解決できるようになります。その結果、学力も向上します。
ゲームに多くの時間を費やしている子どもは、本を読む時間も少なく、さらには、読解力が乏しいため、読書そのものが苦痛でしかなく、なかなか読書活動に前向きに取り組めない傾向が見られます。しかし、学習に必要な「学習言語」を身に付けるためには、読書が欠かせませんので、なんとか、読書習慣を形成する必要があります。ただ、「本を読みなさい」では、読書習慣は形成されません。そこには、家庭環境が大きく関わってきます。家庭において、読書する環境が身近にあれば、子どもは自然と本を読むようになります。この読書をする環境を作るためには、まず、身近に本があること、そして、本を読む大人がいることです。つまり、お家の方が、本を読んでいる姿を見て、子どもも本を読むのです。これについては、改めて述べたいと思います。
292 オンラインゲームについて考える④
ゲームと学力の関係について |
今回、オンラインゲームをしている子どもたちと、していない子どもたちの、学力調査の正答率との相関関係を調べてみました。
国語の平均正答率 | 算数の平均正答率 | |
オンラインゲームをしない | 68.1% | 60.6% |
オンラインゲームをする | 64.0% | 54.2% |
オンラインゲームをしない子どもたちは、オンラインゲームをする子どもたちに比べて、4~6ポイント、正答率が高い結果でした。これは、あくまで平均ですので、誰もがそうだというわけではありません。オンラインゲームをしていても、正答率が高い子どもはおりますし、その逆の子どもも当然います。それぞれの該当児童の全体の傾向として、そういう傾向が見られるということです。
しかし、そこには、やはり大きな関係があると思います。その一つは、前述した宿題の取り組み方です。学校で学んだ内容を定着させる目的の宿題ですが、とりあえずやればいいような取り組み方では、なんの力にもなりません。
また、次のような相関関係も見られました。
本の貸出冊数 | オンラインゲームをする | オンラインゲームをしない |
71冊~25冊 | 42.9% | 57.1% |
24冊~12冊 | 60.0% | 40.0% |
11冊~ 6冊 | 53.3% | 46.7% |
5冊~ 1冊 | 61.5% | 38.5% |
オンラインゲームをしている子どもたちと、していない子どもたちの、学校図書館で借りた本の冊数の関係です。ご覧のように、たくさん本を借りている子どもは、していない割合が高く、逆にあまり借りていない子どもは、している割合が高くなりました。(続く)
291 ちょっとブレイク
コンピュータゲームについて、いろいろと思うことを書いていますが、この私がコンピュータゲームをやってこなかったのかというとそうではありません。むしろ、学生の頃からいろいろなコンピュータゲームを楽しんできた方です。
いわゆる「パーソナルコンピュータ(パソコン)」が出回り始めたのが、私が大学生の頃でした。当時のパソコンゲームは、まだBASIC言語というもので作られていて、自分でプログラムを入力して簡単にゲームを作ることもできました。そして、その頃のパソコンの記憶媒体は、なんとカセットテープでした。ですから、今では信じられないくらいシンプルなゲームが多く、2D(平面的な物)のゲームが主流で、アーケードゲームなどから移植された物も多く、例えば、「ゼビウス」などのシューティングゲーム等よく遊びました。
教員になった頃、ノートパソコンが売り出され、ゲームもかなりグラフィックがきれいで、処理速度も速い物が出回りました。その頃、ロールプレイゲーム(RPG)もかなり面白い物があり、日本で「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」が作られる前に、海外のRPGで「ウルティマ」というものがありました。これは、その後、「ウルティマ・オンライン」となり、オンラインゲームの先駆けとなりました。
このように、学生の時から、コンピュータゲームで楽しんで来たので、その面白さはよく分かります。オンラインゲームもやったことがあるので、その奥深さも分かります。その経験の上で、これは、課題だなあと感じていることを、述べています。
290 オンラインゲームについて考える③
オンラインゲームの遊び方について |
一般的な個人で楽しむゲームなら、自分の都合で始めたり終わらせたりすることはできます。しかし、オンラインゲームは、他の人とつながって楽しむので、場合によっては、自分の都合で終われないようなことも起こります。
実際、フォートナイトでは、1人で戦うだけでなく、2人や3人、4人で一緒に戦うモードもあるので、そのメンバーでつながって一緒に遊んでいる限り、そこから自分の都合でやめることは、かなり難しいと言えます。その一緒に遊んでいるメンバーの中で、事前に「○○で終わる」という約束でもしていれば別ですが、どうでしょう。
さらには、事前に、オンラインで遊ぶ約束をしていたら、急な予定が入っても、変更できない場合も起こりそうです。また、一緒に遊ぶ人数が決まっているとしたら、そのことを決めた仲間以外の人が、その中に入りにくい状況も生まれます。
オンラインゲームをする時間やメンバーを、自分の都合でコントロールできない辺りに、オンラインゲームのやり過ぎやトラブルが起きる原因が隠れているように思います。