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1. 298 「本を読まない高校生」に思う(続き)

投稿日時: 2022/02/24 野木沢小-サイト管理者

 今思うと、当時、読んでいた本は、きっと今は読めないように思います。個人的に思うのですが、長編の本を読み切るには、それなりに時間も必要ですが、それ以上に、それなりのエネルギーがいるように思います。学生の頃、時間もありましたし、エネルギーもあったように思います。だから、あれだけ様々なジャンルの本を読みあさることができたのではないかと思います。それができるのが、高校時代だから、当時の先生方も「今のうち読んでおけ」と示してくれたように思います。きっと、その背景には、「今しか読めないぞ」という思いもあったのかもしれません。

 たしかに、当時は、今のようなネットもスマホもゲームも動画配信もありませんでした。だから読めたのかもしれません。しかし、今でも、高校生にお勧めの本を、たくさんの学校が示しています。ある中高一貫校のサイトでは、こんなコメントがついて、100冊の本を紹介していました。

「中学・高校生活の6年間をどのように過ごしたか、ということはみなさんの 人生に大きな意味を与えるでしょう。さまざまな分野の読書体験を通してみ なさんが豊かな人間性を育むことを期待しています。」

 本を読むことで、私たちは、現実では体験できないような、いろいろな体験をすることができます。前述の私は、「野火」を読んで、戦争体験をしました。「あすなろ物語」を読んで、思春期の成長を体験しました。「吉里吉里人」を読んで、独立騒動を体験しました。そして、トムやハックと一緒に、冒険をしました。実際は、一回こっきりの自分の人生ですが、読書体験を通して、自分の人生を豊かにすることができます。そして、読書を通して、いろいろな生き方にも触れ、いろいろな価値観にも触れるから、自分のものの見方や考え方に幅を持つこともできます。さらに、実社会における他者理解にもつながります。きっと、自分一人だけのものの見方や考え方では、限られてしまうのかもしれません。

 読書することは、学習言語の獲得や語彙、表現などを身に付けるという学びの面と、多様な生き方、考え方に触れ、自分自身のものの見方、考え方を膨らませるという育ちの面があるのだと思います。それは、高校生だけのものではなく、小中学生にとっても大きな意義があり、むしろ、幼少期からの読書体験が大事なのかもしれません。気がついたら、身の回りに本を読む環境があり、小さい時から本を読む楽しさを味わっていれば、きっと、その後もずっと、自分の人生の中に読書活動が根付き、自分の生き方にも大きく関わっていくのだと思います。これは、決して今からでも遅くはありません。まずは、何か一冊、お子さんと一緒に読んでみませんか。