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1. 160 しんごろう

投稿日時: 2020/12/14 野木沢小-サイト管理者

 14日(月)の給食に、「しんごろう」が出ました。(野小っ子NEWSで写真付きで紹介してます)この「しんごろう」という料理は、半突きにしたうるち米を竹串に刺して、「じゅうねん味噌」を塗って焼いた田楽の一つで、会津地方の郷土料理です。貧しくて「もち米」を買えなかった新五郎さんがうるち米を潰して串に指し味噌をつけて火で炙ったのが由来で、その名前がついたそうです。
 さて、このしんごろうを作る時の「半突き」とは、半分粒が残る程度に潰すことですが、別名「半殺し」と言います。この怖い言い方が、面白い落語の噺になっていますので、紹介します。(フジパンのHPより)

 むかし、ひとりの侍が旅をしていて、山の中で日が暮れてしまったと。真っ暗な山の中を、あっち行き、こっち行きして、ようやく一軒の山家(やまが)が見つかった。戸を叩(たた)いたら、中から、「戸は開きますで」と、爺(じい)さんの声がした。戸を開けて家の中に入ると、侍は、「今夜一晩だけ泊めていただけまいか」と、頼んだと。囲炉裏端で縄をなっていたお爺さんとお婆さんは、「ええとも、ええとも、なあ婆さんや」「はえ、はえ、困ったときはお互いさま」「婆さんも、ああいっとります。こんなあばら屋で、よかったらば」と、にこにこして招じ入れてくれたと。侍はあったかいお粥(かゆ)をごっつぉになって、次の部屋に休ませてもらったと。
 旅の疲れで、すぐに眠ったが、そこは侍、真夜中ごろ、お爺さんとお婆さんのひそひそ話に、ふと眼をさました。耳を澄ますと、「明日(あす)はひとつ、半殺しがええべか、それども、お手打ちがええべか」「江戸のお侍さんだそうだで、半殺しがええかも知んないな、お爺さん」といっている。さあ、侍はびっくりした。「これは、山賊の家かもしれん。とんだところへ泊ったもんだ」もう眠るどころではない。刀を抱いたまま布団の中でじいっと様子をうかがっておったと。四方八方、油断なく気を配って、すっかり気疲れした頃、朝になったと。「はて、襲(おそ)って来るのは夜(よる)の内(うち)かと思うたが……、さては、油断させておいて、不意をつく気だな。そうはさせるか」侍は刀をいつでも抜けるように身構えて、その時を待っておった。

 すると、隣りの囲炉裏端のあたりで、コトコト音がして、「婆さんや、半殺しはまだか」「もう少しだよ、お爺さん」との声が聞こえて来た。侍は肝(きも)をつぶして、「いよいよ来るか。何の、こっちから踏み込んでやる」と、刀を掴(つか)むやいないや、パッと隣の部屋へ飛び込んだら…。
 お婆さんが、「おや、お侍さん、もう起きたのかね」と、のんびり声をかけた。「ん?」と思って、婆さんの手元を見ると、婆さんはしきりにスリバチで何かをこねている。「はーて、何だかおかしな具合だな」と、まるで狐に化かされたような顔で眼(まなこ)を点にしていると、婆さんは、「何もないけんど、半殺しでも、ごっつぉすんべと思うてな」といって、出来立てのぼた餅をひとつ、手に乗せて見せた。「ははぁ、半殺しというのは、このぼた餅のことか」侍は、少し気が落ち着いて、「お婆さん、では、お手打ちというのは何のことかね」とたずねると、「はぁ、お手打ちかい。そいつは、家で作ったそばきりのこんだ。本殺しといえば餅のこんだよ」江戸の侍は、これを聞くと一度に気が抜けて、ドシーンと腰をおろしてしまったと。どんべすかんこねっけど。

 ぼた餅のことを「半殺し」、手打ちそばのことを「お手打ち」と呼ぶことを知らなかったお侍さんの勘違いでしたが、ちなみに、粒を残さず、全部潰してつくるお餅を「本殺し」の他に「みなごろし」とも呼ぶそうです。なんともぞっとする言い方ですが…どれも美味しいですね。