学校だより LIVE

1. 303 子育ては、期間限定(続き)

投稿日時: 2022/03/07 野木沢小-サイト管理者

 榎本博明さんという心理学博士が、著書の中で、最近、注意や叱責に耐えられない若者が多くなってきていることを挙げています。その原因の一つは、子ども時代にあると言います。子ども時代に、レジリエンスが鍛えられず、自己コントロール力が身に付いていないからだそうです。レジリエンスとは、心の復元力のことで、嫌なことや大変なことがあって一時的に落ち込んでもすぐに立ち直る力のことです。このレジリエンスが、子ども時代に鍛えられていないというのです。そこには、子ども時代の大人の関わり方に原因があるようです。

 ちょっと前に「子どもが育つ魔法の言葉」という本が流行しました。ほめて育てる内容の本として、多くの人に受け入れられました。榎本さんは、この「ほめて育てる」背景には、「愛情を持って、厳しくしつける」というのがあると言います。何でもほめればいいかというと、そんなことはありません。子どもですから、未熟故に悪いことをすることもある。その時に、しっかりと、なぜそんなことになったのかを考えさせ、自分の行為を恥じさせ、反省させることが大事で、場合によっては、同じ失敗を繰り返さないように罰を与えることも必要だと言います。時に、その子のために、厳しく接することだってあると思います。実際、本の中でも、「家庭内でルールを守らせることは、子どもが社会の一員として生きてゆく上で、とても大切なこと」「親の同情を引けば、わがままが通せるのだと子どもに思わせないように注意すること」も述べているわけです。子育てにおいては、そういう厳しさがないと、前述のような、レジリエンスが低い若者になってしまう恐れがあるというわけです。

 子ども時代に、大切なことを身に付けさせることは、その時を逃してはだめだということだと思います。かの白虎隊の学び舎「日新館」において「什の掟」にある「年長者を敬うこと」「嘘を言わないこと」「ひきょうなことをしないこと」「弱い者をいじめないこと」等を、「ならぬことはならぬことです」として徹底して教え込んだのは、会津武士として、誇りを持って生きていくための素地作りだったからだと思います。人としての正しい生き方を、子ども時代に身に付けさせたわけです。什の掟は、ただの目標ではなく、その行動については、毎日、反省会が開かれ、もし背いた場合は、口頭謝罪から追放まで、厳しい罰があったそうです。それ程までに、厳しく自分たちを律していたからこそ、その後、一人前の武士として、生き続けることができたのだと思います。今、私たちは、武士の子を育てているわけではありませんが、子どもの教育として、相通ずるものが、そこにはあると思います。

 以前、オンラインゲームについて調査した結果について述べました。その時、それぞれのお家で、それぞれ考えを持って、子育てをされていることを紹介しました。中には、子どもに激しく反発されても、親の考えのもと、厳しくされているご家庭もありました。子どもの成長に対して、最終的にその責任を負うのは、お家の方々です。我が子をどのように育てるのか、それは、お家の方々の思い次第です。うちはうち、よそはよそです。我が子の生活の様子において、何か課題があれば、その解決に向けて、悩み、考えるのは、親として当然ですし、みなさん、そうされていると思います。未熟な子どもの成長に、向き合って、関わっていく子育ては、子どもが親元を離れていくまでの、期間限定です。ですから、子どものために、親として責任を持って関われる今、大いに悩み、大いに考え、親として、やれることをやるしかありません。我々学校も、そういうお家の方々と、思いを共有しながら、学校でやれることにしっかり取り組んでいきたいと思っています。

 そして、私たちが忘れてはいけないことは、目の前の子どもは、いずれ、必ず、独り立ちをするということです。その時までに、一人で生きていけるだけの力を身に付けさせてあげなかったら、不幸なのは子ども自身です。生きていくということは、自分の思うようにいかないことの連続です。その時に、レジリエンスを発揮して、前に進んでいくことができるようにしてあげることです。それが、子どもの成長に携わる者の役目だと思います。