学校だより LIVE

1. 145 母の好きな言葉

投稿日時: 2020/11/11 野木沢小-サイト管理者

 先週11月6日の金曜日の夕方、会津に住む私の母親が亡くなりました。ずっと認知症を患っていて、入院していたのですが、食事をとらなくなり、だんだん呼吸も弱くなってきて、最後は老衰でした。86歳でした。月曜日に通夜、火曜日に告別式を行いました。

 多くの方々が最期に会いに来てくださいました。その中に、一緒に旅行していたお仲間の方々がいて、母との思い出をいろいろと話してくださいました。母は、本当に旅行が好きで、行きたいところがあると、すぐに計画を立て、準備を進めて、そして、必ず行ってしまうのでした。日本全国、ほぼ全県に行っていたのではないでしょうか。昔からたまに会いに行くと、大概、どこどこに行って楽しかった、という話をしていました。他にも、会津語りの会に所属し、語り部として、いろんな方に会津の昔話を語っていました。「康二の学校にも行くよ」と言われていたのを思い出します。以前、LIVEで紹介した赤べこの話は、母から聞かされた話でした。

 そんな母が昔から好きな言葉がありました。その言葉が
「施して報いを願わず、受けて恩を忘れず」
というものです。この言葉は、大隈重信の言葉と言われていますが、江戸時代の儒学者の中根東里の言葉のようです。意味は、「人に何かしてあげても、その御礼を期待してはいけない。しかし、自分が他の人から何かしてもらったら、その御恩を忘れてはいけない。」

 世の中には、損得勘定で物事を考えることがあります。それをしたら損か得か。しかし、そういう物の考え方だけでは、きっと殺伐とした世の中になってしまうでしょう。人の心も同じで、損得だけで人と付き合うことは、温かみのない冷たい人間関係しか築けないのではないでしょうか。そうではなく、人に何かしてあげるのは施しです。施しは一方的な行為です。ボランティアです。ですから、そのお返しは期待しません。やってあげたではなく、やらせていただくのが施しです。だから、施しをさせていただいたことに感謝。それ以上はありません。しかし、逆に自分が誰かに何かしていただいたら、そのことについて感謝し、やっていただいたことを忘れずに、次は、自分が何かさせていただくつもりでいる。そういう関係を築くことは、とても大切なのだと思います。