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1. 224 星新一さんの作品から思うこと

投稿日時: 2021/07/01 野木沢小-サイト管理者

 星新一さんという作家をご存じでしょうか。この方は、SF作家で、ショート・ショートという形式で短編の作品を多く書いた方です。私は、高校時代に、この作家の作品を知り、とても気に入り、よく読んでいました。数年前には、小学5年生の国語の教科書にも取り上げられていました。(「おみやげ」という作品でした。)今回の家庭教育学級で「スマホ依存」の話を聞き、この星新一さんの作品で、ちょっと思い出した話がありました。タイトルは忘れてしまったのですが、次のようなお話でした。

 ある企業が、子育ての画期的な機械を開発しました。その機械には、生まれたばかりの子どもを育てるあらゆる機能が備わっていました。お腹が空いて泣けば、ちょうどよい温度のミルクが与えられ、おむつが汚れれば、すぐに交換してくれます。眠たくなれば、やさしい声の子守歌が流れました。この機械のお陰で、若い夫婦は、子育ての苦労から解放され、自分たちの時間が出来て助かるとなって、みな、この機械を購入して、子育てをさせたのでした。それから、20年が経ち、テレビから、一斉に次のようなCMが流れました。「さあ、みなさん、この商品を買いましょう。」そのCMの声は、あの子育て機械から流れていた優しい声と同じものでした。幼い頃、毎日のように聞いていた、地球上で誰よりも安心できる優しい声。その声が、ある商品を買いましょうと言っているのです。何の疑いもなく、大人になった子どもたちは、みな、そのCMの商品を購入するのでした・・・

 星新一さんの作品は、ブラック・ジョークの部分もあるのですが、この作品を最初に読んだときは、なるほどなあ、そういうことになるのか・・・ぐらいの感想でしたが、スマホ依存が問題になっている今、親よりも機械という現実問題が、本当に起きているのかもしれないと思ったのです。本人も家族も、依存している意識は全くない中で、実は知らず知らずのうちに依存(洗脳?)されているとしたら・・・。

 これも、家庭教育学級の中でも紹介された話です。あるお母さんは、赤ちゃんに授乳中も、その目はスマホから離れません。そして、そのスマホに夢中のお母さんの顔を、ミルクを飲みながら、赤ちゃんはじっと見ている・・・。ぞくっとします。赤ちゃんは、どんなことを考えながら、お母さんの顔を見ているのでしょうか。本来なら、ミルクを与えながら、赤ちゃんの顔を見つめるお母さんと、そのお母さんの顔を見ながらミルクを飲む赤ちゃん、そこで、お互いに見つめ合い、愛情が伝わるのではないでしょうか。ミルクをただ与えるのが愛情ではないということだと思います。

 さらに、講話では、大人のスマホ依存について、話がありました。いつの時代も、大人は、子どものモデルです。家で、大人がどのようにスマホを使っているか、子どもたちは、モデルとして見ています。そして、大人の姿から学んでいます。子どもに使い方を考えさせるだけでなく、大人である親も一緒に、子どもとルールを決めていく。できれば、そこに、スマホ等を介さない、リアルな会話を大切にしたコミュニケーションの時間が生まれることを期待したいと思います。