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1. 297 「本を読まない高校生」に思う

投稿日時: 2022/02/24 野木沢小-サイト管理者

 2/22付福島民報に次のような記事が載りました。

 県高校司書研修会の2021年度高校生読書調査の結果、県内の高校生のうち、1ヶ月に1冊も本を読まない生徒の割合が、男子が61.2%、女子は55.3%だった。
 本を読まない理由の1番は、「勉強、部活動、アルバイトなどで忙しい」(男子45%、女子58%)。理由の2番は、「ネットやテレビ、ゲームの方が楽しい」(男子43%、女子38%)。
 男女とも半数以上が一冊も本を読んでいない傾向が、過去十年間続いている。

 この記事を読んでいて、あることを思い出しました。それは、私が高校時代、学校図書の担当の先生から、「高校生が読むべき100冊」なるプリントが配付されたことです。そのプリントには、高校時代に読んでおくべき「おすすめの本」が100冊、リストアップされていました。当時の私は、なぜか、その内容に刺激を受け、そこに紹介されている本を次々に読んでいきました。リストの中には、今では、絶対手にしないような、いわゆる名作と呼ばれる本もたくさん載っていました。100冊は読破できなかったのですが、当時の私の心の中に、深く刻まれた本が何冊かありました。
 例えば、大岡昇平の「野火」。太平洋戦争での戦地が舞台で、想像を絶する戦地の実態を目の当たりにし強い衝撃を受けた作品です。井上靖の「あすなろ物語」。登場人物の少年に自分を重ねて読んでいました。作中に出てくる「克己」という言葉も、ここで初めて知りました。夏目漱石の「坊ちゃん」。物語に出てくる登場人物が魅力的で、特に、数学教師の山嵐が、私と同郷の会津出身であったことが、とてもうれしかった作品です。
 このリストには、海外の作家の作品も含まれていました。O・ヘンリーの短編集。有名な「賢者の贈り物」の他にも、「運命の道」という不思議な読後感になる作品がありました。マーク・トウェインの「ハックルベリー・フィンの冒険」。これは、あのトム・ソーヤの冒険の続編的作品で、トムの親友のハックが主人公の物語です。はらはらどきどきの展開に、とても興味を持って読んでいたことを思い出します。
 それから、このリストとは別に、好きだった日本史の先生が、「高校生のうちに、読んでおけ。」と紹介してくれた本がありました。それが、井上ひさしの「吉里吉里人」でした。東北のある村が、日本政府から独立して「吉里吉里国」を名乗り、たまたまそこに居合わせた主人公が、その騒動に巻き込まれていくという物語です。話の中で、医療、福祉、介護、スポーツ、文化芸術、教育など、いろいろな問題に触れていて、なおかつ、話の展開がとってもスピーディーなので、本自体はすごく分厚くて長編なのですが、意外と一気に読んでしまいました。この作品がきっかけで、その後、日本各地でミニ独立国ブームが起きました。(例えば、二本松の岳温泉では、「ニコニコ共和国」が独立しました。今年夏、16年ぶりに復活するそうです。)(続く)