学校だより LIVE

1. 82 「なりたいなぁ」

投稿日時: 2020/08/25 野木沢小-サイト管理者

 「ねずみの嫁入り」という昔話があります。あるねずみの夫婦が、自分の娘を、世界一強い相手の嫁にしたいと考えました。そして、まず、太陽に相談に行ったら、太陽には「自分は、雲に隠される。雲の方が強い」と言われ、次に、雲に相談に行ったら、「自分は風に飛ばされる。風の方が強い」と言われます。そして、風に相談に行ったら、「自分は土壁は倒せない。土壁の方が強い」と言われ、土壁に相談に行ったら、「自分はねずみに穴を空けられる。ねずみの方が強い」と言われ、結局、最後は、ねずみのところに嫁に出したというお話です。
 このお話と似ている展開の絵本が、学校に寄贈されました。タイトルは「なりたいなぁ」。
 このお話の主人公は、一人の石切職人の若者です。彼はある日、ふと思いました。(毎日、一人で苦労して働いても、だれもほめてくれない。こんな仕事、つまらないなあ。)ある日、お金持ちのパーティーの様子を見て、(あんなお金持ちになりたいなあ)と思いました。すると、不思議なことに、心の底から願ったことが、パッと叶ったのです。気がつくと、若者はお金持ちになっていました。お金持ちの生活に満足していた若者でしたが、ある日、王様が馬車に乗っているのを見て、(王様になりたいなあ)と思いました。すると、今度は、気がつくと王様になっていました。
 こんな感じで、(なりたいなぁ)と思ったものに、次々になれていく若者ですが、王様の後は、太陽、雲、風と変わっていきます。あれ?なんか似ているなあと思ったら、前述の「ねずみの嫁入り」と似ています。しかし、風の後は違っていて、土壁ではなく、山。そして、山の次が石切職人なのです。
 そして、若者は気付きます。石切職人が切り出した石を使って作られた水飲み場や広場で、子どもたちや大人たちが、とても楽しそうに過ごしていることに。そして、心から思うのでした。(ああ、やっぱり、石切職人が一番だ。)石切職人に戻った若者は、その後、一生懸命、自分の仕事をするのでした。
 この絵本のテーマは、「ほんとうの幸せは、あなたの心の中にある。」自分が本来持っている力は、なかなか気付きにくいものです。それより、他の人がもっているものに目がいきがちです。しかし、自分と向き合い、自分のよさを自覚した時、人は本当の幸せを手に入れることができるのかもしれません。そういうことを、優しく教えてくれる素敵な絵本でした。